バルサの背番号12は、シリーズのなかでも異質な番号だ。1〜11番が古典的なポジションを表すのに対し、12番は「11人の次」——つまり控えを意味する番号として始まった。
だから12番には、10番や11番のようなスターの行列はない。だが調べていくと、この番号には意外な顔があった。欧州の頂点に立った男がこの番号を着けていたこと。ここから「シャビの6番」へ昇格した男がいること。そしていま4シーズン以上も空席のままであること。「主役を待つ番号」の物語をたどってみよう。
そもそもバルサにとって「12番」とは?
背番号12は、伝統的な並びで「先発11人の次」=最初の控え選手を意味する番号だ。国やクラブによっては控えゴールキーパーが着ける番号としても知られる(スペインでは1番・13番・25番がゴールキーパーの定番なので、バルサの12番は主にフィールドプレーヤーが着けてきた)。
この「控え番号」という出自ゆえに、12番は選手から積極的に選ばれにくい。実際バルサでも、10番・11番のように歴史を彩る名前がずらりと並ぶわけではない。若手や、加入後に一桁番号を得られなかった選手が背負うことが多い番号である。
※ラ・リーガで固定背番号制が導入されたのは1995-96シーズンから。それ以前は先発11人が1〜11番を着ける方式で、そもそも12番以降が存在しませんでした(歴代7番・14番の記事で解説)。
バルカ12番って「11人の次」って意味だもんね。そう聞くと少し寂しい番号だけど、実はこの番号で欧州を制した選手がいるんだよ。それが今回いちばん面白かった発見。
バルサ歴代12番 一覧
固定番号制以降、12番を背負ってきた主な顔ぶれがこちら。
| 時期 | 選手名 | 国籍 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 2003-04〜2007-08 | ジオヴァンニ・ファン・ブロンクホルスト | オランダ | 12番で2006年のチャンピオンズリーグ制覇。決勝フル出場 |
| 2012-13〜2013-14 | ジョナタン・ドス・サントス | メキシコ | ラ・マシア育ちの中盤。2シーズン背負って退団 |
| 2014-15〜2019-20 | ラフィーニャ・アルカンタラ | ブラジル/スペイン | 6シーズン。歴代最長の12番 |
| 2020-21 | リキ・プッチ | スペイン | ラ・マシアの申し子。翌季は6番へ |
| 2021-22 | マルティン・ブレスウェイト | デンマーク | 9番から12番へ。12番最後の着用者 |
| 2022-23〜現在 | (空き番号) | — | 4シーズン以上、誰も背負っていない |
※背番号はクラブ公式・各シーズンの登録スカッドで確認(2026年7月時点)。📊 ※要確認:1995〜2002年および2008〜2012年の着用者は確かな記録が確認できませんでした。この時期は控えゴールキーパーが着けたか、空き番号だった可能性があります(2009-10シーズンの公式スカッドには12番の登録がありません)。
ファン・ブロンクホルスト(2003〜2007):12番で欧州王者になった男
オランダ代表/左サイドバック
2006年チャンピオンズリーグ決勝にフル出場
12番の歴史でまず知ってほしいのが、オランダ代表のジオヴァンニ・ファン・ブロンクホルストだ。「控えの番号」というイメージを、この男が完全に裏切っている。
2003年に加入し、本来は中盤の選手だったが左サイドバックへコンバートされてポジションを掴んだ。リーガでは105試合5ゴールを記録。そして迎えた2005-06シーズン、チャンピオンズリーグの全試合に出場し、アーセナルとの決勝(2-1)にもフル出場。バルサの欧州制覇を最終ラインから支えきった。
つまりバルサの12番は、ヨーロッパの頂点を経験している番号なのだ。番号のイメージと実際の格が最も乖離している、痛快な例である。2007年に退団し、その後は監督としてレンジャーズなどを率いた。



12番でCL決勝フル出場って、かっこよすぎる。「控えの番号」なんて誰が決めたんだって話だよね。ファン・ブロンクホルスト、渋いけど本当にいい選手だった。
ジョナタン・ドス・サントス(2012〜2014):主役になれなかった逸材
メキシコ代表/中盤
ラ・マシア育ちだが定着できず退団
12番の「主役を待つ番号」らしさを体現したのがジョナタン・ドス・サントスだ。ラ・マシア育ちのメキシコ人中盤で、兄はかつてバルサに在籍したジオヴァニ・ドス・サントス。2012-13と2013-14の2シーズン、トップチームで12番を背負った。
だが当時のバルサの中盤はシャビ、イニエスタ、ブスケツという史上最強の三角形。ここに割って入るのは誰にとっても至難だった。2013-14シーズンは28試合に出場したものの主力の座には届かず、12番を手放してビジャレアルへ。その後はメキシコ代表の主軸として長く活躍した。
12番を背負う若手が直面する現実——「番号より上に、越えられない壁がある」という物語が、ここにある。
ラフィーニャ・アルカンタラ(2014〜2020):12番を愛した男
ブラジル代表/中盤
下部組織時代から12番を背負い続けた
12番を最も長く背負ったのがラフィーニャ・アルカンタラだ。兄はチアゴ・アルカンタラ(かつて11番を背負った選手)で、ともにラ・マシア育ちの兄弟である。
特筆すべきは、ラフィーニャが下部組織時代からこの番号を愛用していたこと。トップチームでもドス・サントスから12番を受け継ぐと、2014-15から2019-20まで6シーズン背負い続けた。「控え番号だから」と敬遠されがちなこの番号を、自ら選んで長く守った稀有な選手だ。
技術は高く評価されながらも、度重なる膝の重傷に苦しみ、主役の座には届かなかった。それでも12番の歴史を語るとき、この名前は外せない。
リキ・プッチ(2020-21):12番から「シャビの6番」へ昇格した男
スペイン/中盤
12番から6番へ。唯一の“出世”例
12番の歴史で唯一、この番号から上へ昇っていった選手がいる。ラ・マシアの申し子リキ・プッチだ。
狭い局面をターンで抜け出す技術がクライフ的と評され、大きな期待を集めた中盤。2020-21シーズンに12番を背負うと、翌2021-22シーズンには背番号6へ変更された。6番といえばシャビ・エルナンデスが刻んだ司令塔の番号——クラブが彼に寄せた期待の大きさが、番号の移動に表れている。
その後は出場機会を求めてロサンゼルス・ギャラクシーへ移り、バルサでの飛躍は果たせなかった。それでも「12番からステップアップした」唯一の実例として、この番号の歴史に確かな意味を残している。


ブレスウェイト、そして続く空席(2021-22〜)
12番最後の着用者はデンマーク代表のマルティン・ブレスウェイトだ。2020年2月に緊急補強で加入し、当初は19番、続いてルイス・スアレスの退団を受けて9番を着用。そして2021-22シーズンに12番へ移っている。
そのブレスウェイトが去った2022-23シーズン以降、バルサの12番は誰も背負っていない。2023-24も2024-25も2025-26も空席で、2026-27シーズンも主不在のままだ。4シーズン以上にわたる空席——シリーズで扱ってきた番号のなかでも、これはかなり異例である。
理由はシンプルで、「12番=控え」というイメージを選手が避けるからだろう。新加入選手も若手も、可能なら一桁や、意味を持つ番号を選ぶ。結果として12番は、文字通り主役を待ち続ける番号になっている。
もうひとつの見方:12番は「サポーターの番号」
じつは12番には、世界のサッカーで共有されているもうひとつの意味がある。「12番目の選手(トゥエルフス・マン)=サポーター」という考え方だ。ピッチに立てるのは11人。だからスタンドで声を出し続けるファンこそが12人目——という敬意の表現である。
この考えを制度にしたクラブもある。バイエルン・ミュンヘン、パリ・サンジェルマン、ラツィオ、フェイエノールトなどは、12番をサポーターに捧げて選手には与えない(永久欠番)という形をとっている。日本代表の12番がサポーターの番号として知られているのも同じ発想だ。
ただし、ここは正確に押さえておきたい。バルサは12番を永久欠番にしていない。というより、できない。理由は制度的なもので、ラ・リーガではトップチームの登録選手が1〜25番を使うことが定められているためだ。1つでも欠番にすると使える番号が24しかなくなってしまう。メッシの10番すら永久欠番にできなかったのは、まさにこの規則が理由である。
つまりバルサの12番の空席は、「ファンに捧げた欠番」ではなく、単に誰も選んでいないから空いているのが実情だ。それでもファンのあいだで「12番はソシオ(クラブ会員)の番号」と語られることがあるのは、この世界共通の感覚を、バルサ流に重ねているからだろう。いつでも選手が着けられる。それでも空いている——バルサの12番は、そういう番号だ。



4シーズンも空いてるって知って驚いた。でも逆に考えたら、これから出てくる若手が「あえて12番」を選んで大成したら、それだけで伝説になれる番号だよね。狙い目だと思うんだけどなあ。
📊 分析:バルサの12番はどんな番号か
ポジションは一貫しない「その他」の番号
12番の着用者を並べると、ポジションに法則がない。左サイドバック(ファン・ブロンクホルスト)、中盤(ドス・サントス、ラフィーニャ)、フォワード(ブレスウェイト)。2番が右サイドバック、3番がセンターバックで一貫していたのとは対照的だ。
これは12番がポジションを表す番号ではないためである。1〜11番が埋まった後に配られる番号だから、着ける選手の役割はバラバラになる。
「12番から出世した選手」はいるのか
この番号を語るとき、いちばん気になるのが「12番から一桁へ昇格していく物語」だ。着用者の番号の動きを並べてみると、こうなる。
- リキ・プッチ … 12番 → 6番(シャビの番号)へ昇格。唯一の出世例
- ラフィーニャ … 6シーズン12番のまま(自ら好んで着け続けた)
- ファン・ブロンクホルスト … 主役級の働きをしながら12番のまま
- ブレスウェイト … 19番 → 9番 → 12番(むしろ番号が下がる形)
- ドス・サントス … 昇格できずに退団
つまり「12番は出世の踏み台」と呼べるほどの例は、リキ・プッチの一件だけ。むしろ12番は、その選手のキャリアをそのまま映す鏡のような番号だった。だからこそここから昇っていく物語は、まだほとんど誰も書いていない——次に12番を選ぶ選手にとっては、大きなチャンスである。
通信簿:華はないが、頂点を知っている
総合すると、12番の評価はこうなる。スターの系譜という意味では最も地味な番号。だが2006年のチャンピオンズリーグ制覇を支えた選手が着けていたという一点で、決して軽い番号ではない。3番のピケが14年、8番のイニエスタが11年のような長期政権もなく、いまは空席。物語の続きが最も白紙に近い番号と言える。
❓ よくある質問
Q. 現在のバルサの12番は誰?
A. 2026年7月時点では誰も背負っていない(空き番号)。最後の着用者は2021-22シーズンのマルティン・ブレスウェイトで、2022-23シーズン以降は4シーズン以上にわたって空席が続いている。
Q. なぜ12番は主役が少ないの?
A. 12番が「先発11人の次」=控えを意味する番号として始まったから。1〜11番のようにポジションを表す意味を持たず、選手からも積極的に選ばれにくい。そのためスターが定着しにくく、若手や番号を選べなかった選手が着けるケースが多くなる。
Q. バルサの12番はサポーターの永久欠番なの?
A. いいえ、永久欠番ではない。日本代表やバイエルン・ミュンヘンなどは12番をサポーターに捧げて欠番にしているが、バルサは制度上それができない。ラ・リーガの規則でトップチームは1〜25番を使う必要があるため、1つ欠番にすると番号が足りなくなるからだ(メッシの10番を欠番にできなかったのも同じ理由)。現在の空席は「捧げた欠番」ではなく、単に誰も選んでいない状態である。
Q. 12番で最も活躍した選手は?
A. ジオヴァンニ・ファン・ブロンクホルスト。2003年から2007年まで12番を背負い、リーガ105試合5ゴール。とりわけ2005-06シーズンはチャンピオンズリーグ全試合に出場し、アーセナルとの決勝にもフル出場して欧州制覇に貢献した。
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華やかなスターの行列はない。それでも12番は、欧州の頂点を知っている番号だ。そして今、4シーズン以上も主を待ち続けている。この番号を選び、伝説にする選手がいつか現れるかもしれない。そのとき12番は、シリーズで最も劇的な物語になる。
Visca el Barça!Vamos Blaugrana!!







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