背番号シリーズもついに最後、背番号25である。
この番号には、はっきりした正体がある。「第3ゴールキーパーの番号」だ。ラ・リーガではトップチームが使える背番号は1〜25番までと決まっており、25番はその末端。そして規定上、1番と13番はゴールキーパー用に予約されている。3人目のGKが必要になったとき、行き着く先が25番なのだ。
地味な番号に見えるかもしれない。だが調べてみると、ここには「1番になる前のバルデス」も、「ブスケツの父」も、そして引退を撤回してやってきた男もいた。
そもそもバルサにとって「25番」とは?
25番を理解するには、ラ・リーガの背番号ルールを知る必要がある。
スペインではトップチーム登録選手は1〜25番しか使えない。26番以降はBチーム(フィリアル)登録の選手のものだ。ラミン・ヤマルが27番から19番へ、パウ・クバルシが33番から2番へ変えたのも、この規定によるものである。
さらに1番と13番はゴールキーパー用に予約されている。ではGKが3人いたらどうするか——残った枠の末端、25番が使われる。これが「25番=第3GKの番号」という慣習の正体だ。
※ラ・リーガで固定背番号制が導入されたのは1995-96シーズンから。それ以前は先発11人が1〜11番を着ける方式で、そもそも12番以降が存在しませんでした。したがって25番に「固定制以前の歴代着用者」は存在しません。
バルサ歴代25番 一覧
固定番号制以降、25番を背負ってきた顔ぶれがこちら。ゴールキーパーの多さに注目してほしい。
| 着用時期 | 選手名 | 国籍 | ポジション | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 1995-96 | キケ・アルバレス | スペイン | DF | 25番の初代 |
| 1997-98 | カルレス・ブスケツ | スペイン | GK | セルヒオ・ブスケツの父 |
| 1998-99 | フランク・デ・ブール | オランダ | CB | 翌季は22番へ |
| 1999-2000〜2000-01 | フランセスク・アルナウ | スペイン | GK | ラ・マシア育ちの第3GK |
| 2001-02 | リシャール・デュトリュエル | フランス | GK | — |
| 2002-03 | ロベルト・エンケ | ドイツ | GK | のちハノーファーとドイツ代表で活躍 |
| 2003-04 | ビクトル・バルデス | スペイン | GK | 翌季から伝説の1番へ |
| 2004-05〜2008-09 | アルベルト・ジョルケラ | スペイン | GK | ラ・マシア育ち。バルデスの控えを長く務める |
| 2009-10〜2011-12 | (空位) | — | — | 3シーズン連続 |
| 2012-13 | アレックス・ソング | カメルーン | MF | 翌季17番へ |
| 2013-14 | オイエル・オラサバル | スペイン | GK | ラ・マシア育ち |
| 2014-15〜2016-17 | ジョルディ・マシプ | スペイン | GK | ラ・マシア育ちの第3GK |
| 2017-18 | トーマス・フェルマーレン | ベルギー | CB | 23番→25番→24番と移動 |
| 2018-19〜2020-21 | (空位) | — | — | 3シーズン連続 |
| 2021-22(1月〜) | ピエール=エメリク・オーバメヤン | ガボン | FW | 半年で13ゴール。翌季17番へ |
| 2022-23〜2023-24 | (空位) | — | — | 2シーズン連続 |
| 2024-25〜現在 | ボイチェフ・シュチェスニー | ポーランド | GK | 引退を撤回して加入。国内三冠に貢献 |
※記録は各シーズンの登録スカッドで確認(2026年8月時点)。📊 ※要確認:1996-97シーズンの着用者は特定できませんでした。
バルカ見て、この表。18人中10人がゴールキーパー。こんなにポジションが偏ってる番号、シリーズで初めてだよ。
ビクトル・バルデス(2003-04):1番になる前の25番
スペイン代表/ゴールキーパー
2003-04に25番。翌季から1番へ
25番の歴史でいちばん胸が熱くなるのが、ビクトル・バルデスだ。
のちにバルサの守護神としてサモラ賞5回を受賞し、2008-09の史上初の三冠でゴールを守った男が、2003-04シーズンに着けていた番号は25だった。第3GKの番号である。
そして翌2004-05シーズンから1番へ。以降、2014年に退団するまでその番号を守り続けた。25番は、彼が守護神になる直前の1年だったのだ。
この構図は、24番がプジョルやイニエスタの「昇格前の番号」だったのとよく似ている。24番の物語はこちらで。


バルデスのサモラ賞についてはこちらで詳しく。


カルレス・ブスケツ(1997-98):あの選手の父
スペイン/ゴールキーパー
セルヒオ・ブスケツの父
1997-98シーズンの25番はカルレス・ブスケツ。
この名字でピンと来た方も多いだろう。セルヒオ・ブスケツの父である。
父カルレスはバルサの控えゴールキーパーとして長く在籍し、1991-92シーズンのヨーロッパカップ初制覇(ウェンブリー)のメンバーでもあった。息子のセルヒオは、のちに16番から5番へと歩み、クラブ史上3位の出場数を残すことになる。
父は25番のGK、息子は5番のアンカー。同じクラブで、まったく違う番号と役割を背負った親子である。5番の物語はこちらで。





ブスケツのお父さんがバルサのGKだったって、知ってると急に親近感が湧くよね。しかも25番。控えの番号を着けて、息子の世代を見てきたわけだ。
第3GKたちの系譜(1997〜2017)
25番を並べると、ラ・マシア育ちのゴールキーパーが延々と続くのが分かる。
フランセスク・アルナウ(1999-2000〜2000-01)、アルベルト・ジョルケラ(2004-05〜2008-09)、オイエル・オラサバル(2013-14)、ジョルディ・マシプ(2014-15〜2016-17)——いずれも下部組織出身で、正GKの背中を見ながら25番を着けていた。
とくにジョルケラは5シーズンと長い。バルデスの控えとして黙々と役割を果たし、2008-09の三冠シーズンにもスカッドの一員として名を連ねている。
ロベルト・エンケの1年
2002-03の25番は、ドイツ人ゴールキーパーロベルト・エンケだった。
バルサでの出場機会はほとんどなく、1シーズンで去っている。その後ハノーファーでドイツ代表の正GK候補にまで登りつめたが、2009年に32歳で亡くなった。彼の死は、サッカー界がうつ病という問題に向き合うきっかけのひとつになった。
ラ・マシアの物語はこちらで。


ゴールキーパーではなかった4人
25番の着用者は圧倒的にGKだが、例外もいる。
アレックス・ソングと「27番」
アレックス・ソング(2012-13)には、番号にまつわる面白い話がある。
彼は28人きょうだいという大家族に育った。アーセナル時代は17人の姉にちなんで17番を着けていたという。
2012年にバルサへ加入した際、彼が最初に希望したのは27番——きょうだいの数にちなんだ番号だった。だがトップチーム登録は25番までという規定に阻まれ、断念。17番はペドロのものだったため、暫定的に25番を選んだ。
そして翌2013-14、ペドロが7番へ移ったことで念願の17番を手に入れている。17番の物語はこちらで。


フェルマーレンの「23→25→24」
トーマス・フェルマーレンは、このシリーズでも稀な記録を持っている。バルサで23番、25番、24番の3つを着けたのだ。
2014年に23番で加入し、ローマへのレンタルから復帰した2017-18は25番、そして2018-19は24番。1シーズンごとに番号が動いている。
順番にも意味がありそうだ。25番はスカッドの末席で、復帰直後の彼の立ち位置がそのまま出ている。翌年に24番へ上がったのは、わずかながら序列が戻ったということかもしれない。ちなみに彼が25番だった2017-18、24番を着けていたのはジェリー・ミナだった。23番の物語はこちらで。


オーバメヤンの半年13ゴール
ガボン代表/フォワード
半年でリーグ13ゴール
25番の歴史における最大の「異物」がピエール=エメリク・オーバメヤンだ。
2022年1月、アーセナルからフリーで加入。冬の移籍市場だったため空いていた番号が25番しかなかったという、なんとも実務的な理由での着用である。
ところが彼は、この半シーズンでリーグ13ゴール1アシストという爆発的な数字を叩き出した。控えGKの番号を着けたストライカーが、ゴールを量産する——25番の歴史でこれほど場違いで、これほど痛快な記録もない。
翌2022-23シーズンには17番へ変更している。



第3GKの番号でリーグ13点。この違和感、たまらないよね。しかもその後ちゃんと17番に移ってるのが余計におかしい。
ボイチェフ・シュチェスニー(2024〜2026):引退を撤回してやってきた男
ポーランド代表/ゴールキーパー
2024-25の国内三冠に貢献
25番の最新の主役がボイチェフ・シュチェスニーである。
話は2024年夏にさかのぼる。ユベントスを離れた彼は、現役引退を表明していた。ところがバルサでテア・シュテーゲンが膝蓋腱を断裂する重傷を負う。クラブからの要請を受け、彼は引退を撤回して2024年10月に加入した。
このとき1番はテア・シュテーゲン、13番はイニャキ・ペーニャが使用中。残っていたのが25番だった。
第3GKが、三冠の守護神になった
2025年1月、コパ・デル・レイのバルバストロ戦でデビュー。そこから正GKの座を掴み取る。
クラブ公式によれば、2024-25シーズンは公式戦30試合で14試合を無失点。しかもリーグ戦では一度も敗戦チームにならなかった。ベンフィカ戦(エスタディオ・ダ・ルス)での8セーブは、テア・シュテーゲン以来となるバルサ選手の1試合8セーブだった。
結果、スーペルコパ、コパ・デル・レイ、リーガの国内三冠に貢献。引退するはずだった男が、第3GKの番号を着けて、三冠の守護神になったのである。
2025-26はジョアン・ガルシアの加入で控えに回りつつも25番を継続。2026-27シーズンも25番のままだ。引退するはずだった男が、いまも第3GKの番号を背負い続けている。
そして現在:GK3人体制がそのまま残った
2026-27シーズンも、25番はシュチェスニーのままだ。
ゴールキーパーの番号は前季から一切動いていない。1番がテア・シュテーゲン、13番がジョアン・ガルシア、25番がシュチェスニーという構成である。
ただしテア・シュテーゲンは2026年8月にアヤックスへレンタル移籍しており、実際にピッチに立つのはジョアン・ガルシアとシュチェスニーの2人だ。1番は「持ち主が不在のまま」空けられている形になる。



25番って、スカッドにGKが何人いるかがそのまま出る番号なんだよね。逆に言えば、この番号が埋まってる限り、バルサは3人目のGKを抱えてるってこと。
📊 分析:バルサの25番はどんな番号か
①GK率がシリーズで断トツ
着用者をポジション別に分けると、この番号の特殊さがはっきりする。
| ポジション | 人数 | 該当選手 |
|---|---|---|
| ゴールキーパー | 8人 | カルレス・ブスケツ、アルナウ、デュトリュエル、エンケ、バルデス、ジョルケラ、オラサバル、マシプ、シュチェスニー |
| ディフェンダー | 3人 | キケ・アルバレス、フランク・デ・ブール、フェルマーレン |
| ミッドフィルダー | 1人 | アレックス・ソング |
| フォワード | 1人 | オーバメヤン |
2番が右サイドバック、13番がゴールキーパーという「役割が固定された番号」はこれまでにもあったが、25番はその中でも制度に裏打ちされている点が違う。慣習ではなく、ルールがそうさせているのだ。
②空位が非常に多い
25番も空位が目立つ。2009-10〜2011-12、2018-19〜2020-21、2022-23〜2023-24と、確認できるだけで8シーズンある。
理由は単純で、GKを2人しか登録しないシーズンは25番が不要になるから。24番が「スカッドの末席だから空きやすい」のと同じ構造だ。
③ここもまた「昇格前の番号」だった
25番から別の番号へ移った選手も多い。
| 選手 | 25番の時期 | 移った先 |
|---|---|---|
| ビクトル・バルデス | 2003-04 | 1番 |
| フランク・デ・ブール | 1998-99 | 22番 |
| アレックス・ソング | 2012-13 | 17番 |
| オーバメヤン | 2021-22 | 17番 |
とくにバルデスの25→1は、このシリーズ全体でも屈指の「出世」だ。22番の物語はこちらで。


通信簿:制度が決めた番号、それでも物語はあった
25番はスター選手の番号ではない。長期政権もなく、空位も多い。ラ・リーガの規定が生んだ、いわば事務的な番号である。
だがその事務的な番号にも、1番になる前のバルデスがいて、ブスケツの父がいて、半年で13点取ったオーバメヤンがいて、引退を撤回して三冠を掴んだシュチェスニーがいた。
末席の番号にも、必ず誰かの物語がある——25番は、それを静かに教えてくれる番号だ。
❓ よくある質問
Q. 現在のバルサの25番は誰?
A. ボイチェフ・シュチェスニー(ポーランド/ゴールキーパー)。2024年10月の加入以来ずっと25番で、2026-27シーズンの公式スカッドでも25番だ。GKの構成は1番テア・シュテーゲン、13番ジョアン・ガルシア、25番シュチェスニーだが、テア・シュテーゲンは2026年8月にアヤックスへレンタル移籍している。
Q. なぜ25番にはゴールキーパーが多いの?
A. ラ・リーガの規定による。トップチーム登録は1〜25番までで、1番と13番はGK用に予約されている。3人目のGKが必要になったとき、残った枠の末端である25番が使われる慣習になっているのだ。
Q. 25番で最も印象的な選手は?
A. ボイチェフ・シュチェスニー。2024年に引退を表明していたが、テア・シュテーゲンの重傷を受けて引退を撤回して加入。第3GKとして25番を着けながら正GKの座を掴み、スーペルコパ・コパ・リーガの国内三冠に貢献した。物語性ならビクトル・バルデスで、25番の翌年から伝説の1番になっている。
Q. カルレス・ブスケツって、あのブスケツと関係あるの?
A. セルヒオ・ブスケツの父である。控えゴールキーパーとしてバルサに長く在籍し、1991-92のヨーロッパカップ初制覇メンバーでもあった。1997-98に25番を着けている。
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バルデスが移った1番、ソングとオーバメヤンが移った17番はこちら。




同じく「昇格前の番号」だった24番、フェルマーレンが着けた23番もどうぞ。




1番から25番まで、すべての番号の物語はこちら。


現在のチームの背番号やスタッツは、選手名鑑でチェック。


これで1番から25番まで、すべての番号を見てきたことになる。25番はその最後尾——制度が決めた、控えのための番号だ。それでもここには、守護神になる前のバルデスがいて、名手の父がいて、引退を撤回してきた男がいた。
番号に優劣はない。あるのは、それを背負った人間の物語だけだ。
Visca el Barça!Vamos Blaugrana!!






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