バルセロナの象徴ともいえる“ハイプレス&ハイライン”を巡って、サッカー界のレジェンド2人が真逆の評価を下している。昨シーズン、この戦術で明確な成果を上げたバルサ。しかし今季は対策や怪我人の影響もあり、失点が増えるなど不安定さが目立つ。その状況に対して、ティエリ・アンリは「このハイラインは危険すぎる」と強い警告を発し、一方でペップ・グアルディオラは「頼む、何も変えないでくれ」と絶賛。かつて三冠を共に戦った2人がなぜここまで意見を分けるのか。本記事ではその理由を深掘りしつつ、最後に筆者としての見解もまとめていく。
フランスの英雄の警告「このハイラインは危険すぎる」
昨シーズン、バルサはハイプレスとハイラインを武器に明確な成果を上げ、外部からも肯定的な声が多かった。
しかし、その成功に対して ティエリ・アンリは違う角度から強い警告を発している。
かつてペップ率いる黄金期バルサの一員として戦術を体現したアンリだからこそ、現在のチームが抱えるリスクを看過できないのだ。
アンリは現在のフリック体制下でのハイライン戦術について、
「もう止めるべきだ」
と明言した。理由は明確で、最終ラインを高く保ちすぎるあまり、背後のスペースを突かれるリスクがあまりにも大きいからだ。
実際に今季のバルサは、ハイプレスの裏を突かれて失点を重ねており、連続失点が9試合に到達。
守備時のポジショニングが乱れると一気に背後を取られ、GKとCBだけが晒される場面が目立つ。
アンリは試合分析の中でこう語っている。
彼の指摘は単なる批判ではなく、現場感覚に基づいた現実的な警告でもある。
攻撃的な哲学を尊重しつつも、いまの守備バランスでは欧州トップレベルとの戦いでは脆さが露呈する、と。
そのうえでアンリは「攻撃的であることを否定するのではなく、“ラインの高さ”を状況に応じて調整すべき」と主張している。
つまり“バルサらしさ”を守りながらも、リスクを最小化する新たなステージに進むべきだというメッセージだ。
バルサの英雄の絶賛「頼む、何も変えないでくれ」
バルセロナのハイプレス戦術に対して、外部からは批判も多い。
しかしペップ・グアルディオラは、真逆の評価を下している。
自身がかつて築いた黄金期の哲学と重ね合わせるように、現在のフリック体制のバルセロナを高く評価しているのだ。
ペップは現バルサについて、こう語った。
つまり、バルセロナが採用しているハイライン(高い最終ライン)とハイプレス戦術を“魅力の源”として捉え、戦術の継続を強く支持している。
ペップの意見は単なる感情論ではなく、彼の哲学に深く根ざしている。
彼はフリック監督のスタイルを「ヨハン・クライフの思想に近い」と評価し、
「1-0で勝つより、5-4で勝つ方が良い」
というクライフの美学を継承するものとして肯定している。
さらにペップは、現在のバルサのプレーに以下の3点を見ている:
1.高いラインで相手を押し込み続ける勇気
2.ボールを失った瞬間の“即時奪回”を徹底する姿勢
3.リスクを恐れず前に出る攻撃的なアイデンティティ
これらはペップ自身がかつてバルサで徹底した「ポジショナルプレー」「5秒ルール」の原点でもあり、彼のサッカー哲学と現チームのスタイルが響き合っていると言える。
外部からの批判に対しても、ペップは明確だ。
「バルサはこのままでいい。変える必要はない」とはっきり示し、
“ハイライン&ハイプレスこそがバルサらしさ”
という、クラブのアイデンティティを守る立場を取っている。
ワシの考えとまとめ
個人的には、バルサというクラブは「1-0より5-4で勝つ方が美しい」という哲学を続けてほしいチームだと思っている。だからこそ、今のハイプレス&ハイラインを簡単に変えてほしくない。
目先の安定感を求めすぎて守備的に寄っていけば、それはもうバルサではないし、魅力を失えばファンも離れてしまう。
とはいえ、ファンが“勝つチーム”を見たいのも事実だ。
当然、失点が少なければ勝つ確率は上がる。そのジレンマが今のバルサの議論の中心にある。
昨シーズンうまく機能した戦術が、今シーズンは対策されて苦しむことはむしろ自然な流れだ。
さらに怪我人が多く、昨シーズン 16試合で105回の即時奪回 が、今季は 66回 にまで落ち込んでいる状況を考えれば、成績が安定しないのは当然とも言える。
ただ、これは悲観する理由ではなく、むしろシーズン前半のうちに問題点が見えているのはポジティブだと思っている。修正する時間はまだ十分にある(もちろん改善できることが前提だが)。
また、バルサはボールを握るチームである以上、
・「カウンターは使うべきでない」という意見
・「効果的な得点のためにカウンターも武器にすべき」という意見
が常に存在するのも不思議ではない。
正直、
2010-11シーズン(ペップ最盛期)と2014-15シーズン(MSNの高速カウンター)の両方が使える“最強バルサ”であれば理想だが……
両方は無理だよね、さすがに(笑)
だからこそ、個人的な結論はこうだ。
もろさはあっても、見ていて心が震える今のハイプレス&ハイラインは継続するべきだ。
ただし、試合終盤だけは別。
無理にラインを上げ続けるのではなく、試合をコントロールして“確実に勝ち切る”ための落ち着きも必要だと思う。
攻撃的で美しいサッカーを貫きながら、終盤は冷静にクローズする。
そのバランスこそが、今のバルサに求められている競争力だと感じている。


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