2025年夏、FCバルセロナは“再建”から“進化”のフェーズへと向かう中で、重要な決断を下し始めている。
守護神テア・シュテーゲン──長年ゴールを守ってきたキャプテンは、ついに“構想外”となり、静かにクラブを去る可能性が高まっている。一方、ジローナで才能を開花させたパブロ・トーレは、再契約の上で“育成型”の移籍を選択し、未来の中盤を担う候補として囲い込まれた。
ベテランを見送り、若手を育てる。この対照的な2人の決断には、バルサの未来を見据えた明確な意図がある
テア・シュテーゲン、ついに“構想外”へ──キャプテンから第3GKに転落
怪我明けの今季、まさかの“第3GK”評価
かつては“絶対的守護神”として君臨し、バルセロナのビルドアップに革命をもたらしたテア・シュテーゲン。しかし、昨シーズンは第6節のビジャレアル戦で右膝膝蓋腱を完全に断裂し手術。結果、復帰まで8ヶ月以上必要でありシーズンの大半を棒に振り、ピッチから姿を消した。
その間に台頭したのが、昨シーズン途中加入のヴォイチェフ・シュチェスニー と今シーズン新加入のジョアン・ガルシア。とくに今夏加入したジョアン・ガルシアは、フリック監督の志向するハイライン守備や足元での組み立てに適した人材として高く評価されている。
今季テアは、まさかの“第3GK”という序列になってしまった。
これは彼自身にとっても、クラブにとっても、大きな転換点だ。
ドイツ代表でW杯に出場したければ、控えではいられない
来年に迫る2026年北中米W杯。現在33歳のテアにとってはおそらくキャリア最後のW杯出場のチャンスとなる。
これまでの代表キャリアではノイアーの壁に阻まれ、スタメンとしての活躍は限られてきたが、今大会はそのラストチャンス。しかし──バルサでベンチに甘んじたままでは、当然選ばれない。
テア本人もこの現状を理解しており、ドイツ代表での生き残りをかけた“移籍の夏”になる可能性が高まっている。
契約は2028年まで、でも“移籍の夏”になる可能性
テアの契約は2028年まで残っており、年俸も約900万ユーロと高額。そのため簡単には移籍できない状況にある。
だがクラブ側としても、功労者でありキャプテンでもあるテアを「フェードアウト」させるのではなく、“華のある移籍”という形で見送る準備をしているとも報じられている。
プレミアリーグやセリエAの上位クラブへの移籍が噂される中、バルセロナの“次の時代”が静かに始まっていることを象徴する案件となっている。
ちなみにテアの移籍金についてはこんな形だ。
このまま移籍となれば、バルサとしては珍しくしっかり移籍金を残してくれる珍しい選手ともいえますね。
タイミング | 移籍金 |
---|---|
バルセロナ入団時(2014年) | 1,200万ユーロ(約17億円) |
現在の想定移籍金(2025年夏) | 3,000万〜4,000万ユーロ(約52億〜70億円) |
しかし、長年貢献してくれた守護神だけに表玄関からお見送りしたいですね…
パブロ・トーレ、“放出”ではなく“育成のための移籍”という選択
2024-2025シーズンの成績と評価
大会 | 試合数 | 得点 | アシスト | 出場時間(分) |
---|---|---|---|---|
ラ・リーガ | 10 | 3 | 2 | 308 |
UEFAチャンピオンズリーグ | 2 | 0 | 0 | 18 |
コパ・デル・レイ | 0 | 0 | 0 | 0 |
全公式戦合計 | 12 | 3 | 2 | 326 |
2024-25シーズンはバルセロナで1年間過ごしたが、途中出場が多く目を張るような結果は得られていない。
個人的には出場した試合では結構印象的なプレーが多いイメージはあるけど…
最も出場の多かったポジションは攻撃的ミッドフィルダー(MF)にはなるけど、このポジションは、ダニオルモ、フェルミンロペス、ペドリ、ガビと若手で成長著しいから並大抵の実力では定位置は掴めない。
また、守備面や球際での強度には課題も残り、「バルサの中盤ローテーションに割って入るにはもう一歩」という評価がクラブ内でも下されたと見られている。
フリックの構想では出番は限定的
2025-26シーズンの中盤構成は極めて激戦。
ペドリ、ガビ、デ・ヨング、フェルミン、ダニオルモと多彩かつハイレベルな面々が揃う。
さらにフリック監督は「強度」「守備への切り替え」「トランジション」への意識を重視するタイプ。そうした要素において、パブロはまだ伸びしろを期待される“素材段階”。
そのため、「バルサに戻す=即スタメン」という段階ではないのが現状だ。
つまり試合に出られたとしても、国王杯などの格下相手の時や大勝している時になりやすい。
せっかくの成長期の美味しい時期をベンチで過ごすのはスポーツ選手にとっては苦痛でしかない
契約延長の上でマジョルカへ──“育成型移籍”の狙い
今回のマジョルカ移籍は、“放出”ではなく“育成の一環”としての移籍であることが重要なポイントだ。
クラブはパブロとの契約を延長し、マジョルカへの移籍金は500万ユーロ(約8億6000万円)、また仮にマジョルカが今後パブロ・トーレを他クラブへ売却した場合、売却額の半額がバルセロナに入る仕組みです。昔からバルセロナはよくやるイメージの戦略ですが、うまくいった記憶はあまりありませんね…
なんにしてもマジョルカで活躍してフリック監督のお目に止まれば、将来的な買い戻しオプションや復帰を視野に入れた条項付きでの移籍を選択。つまり、完全に手放すのではなく「今はまだそのときではない」という判断だ。
マジョルカというリーガ1部に所属するチームでより多くのプレー時間と責任が与えられ、より実戦的でフィジカルな環境で“トップクラブ基準の強度”を身につける機会となる。
それは、再びバルサのユニフォームを着るための“通過点”に過ぎない。
まとめ|手放す決断と、託す決断──未来へと進むバルサ
バルセロナにとって、2025年の夏は「再建」ではなく「進化」に向けた節目の夏になる。
クラブを支え続けたキャプテン・テア・シュテーゲンを静かに送り出し、
未来の中盤を担う可能性を秘めたパブロ・トーレをじっくり育てる。
その二人に対する真逆の方針は、いずれも「チームの未来を見据えた決断」だ。
感情論だけでは整理できない別れと期待。
それでもバルサは“今”ではなく“未来”を選んだ。
キャリアの終盤に差し掛かったベテランを、誇りある形で送り出すこと。
そして、若い才能にもう一度“挑戦の場”を与えること。
その両方を大切にするクラブの姿勢には、ラ・マシアを大切にしてきた“バルサらしさ”が確かに生きている。
この夏の選択が、数年後に「正しかった」と言われるように──
クラブはまた、静かに次のサイクルへと歩みを進めている。
Visca el Barça!Vamos Blaugrana!!
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